2026.08.04
カテゴリ: あちこち訪問記(海外),構造物を訪れて
【連載】揚子江に架かる長大橋を訪ねて 第3回 世界最長の斜張橋となった蘇通大橋 前編
前回までは、鎮江市と揚州市を結ぶ潤揚大橋を紹介してきたが、今回から前後編で、竣工時に世界最長の斜張橋となった蘇通大橋を紹介していく。
世界最長を記録した斜張橋
蘇通大橋(Sutong Bridge)は、上海市から揚子江を約100km遡った地点に位置し、北岸の南通市と、南岸の蘇州 (常熟市) を結んでいる。正式名称は蘇通長江公路大橋 (Sutong Yangtze River Highway Bridge)である。橋長は8,142m、その中間部にある全長2,088mの斜張橋を主体とした長大橋で、2008年5月に開通した。中国大陸の東海岸沿いを南北に縦断する瀋海高速道路の一部で、揚子江の下流部を横断する重要な道路橋である。(写真1・2)
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写真1 蘇通大橋の遠景
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写真2 蘇通大橋の斜張橋(ポスター)
橋の中央部には、中央径間1,088m、側径間500m、全長2,088mの鋼斜張橋があり(文献1)、その中央径間は、日本の多々羅大橋の890m(1999年)を抜いて、当時世界最長の斜張橋となった。中国では、蘇通大橋が完成した翌年の2009年に香港の昂船洲橋(ストーンカッターズ橋:Stonecutters Bridge)1,018m、2010年には鄂東長江大橋の926mと次々に長大橋を竣工させたが、蘇通大橋はこれらの橋よりも中央径間が長く、当時、世界の橋梁技術者の注目を集めていた。
筆者が蘇通大橋を訪れた2010年当時の中国では、長大斜張橋の建設が爆発的なブームとなっていた。世界のスパン500m以上の斜張橋33橋のうち、約3/4がそれまでの15年間に中国で建設された橋で占められている状況であった。その中で、蘇通大橋は中央径間1,000m を超え、世界一の記録を保持し続けていたのである。
その後、2012年4月にロシア極東ウラジオストクのムラヴィヨフ・アムールスキー半島とルースキー島の間、東ボスポラス海峡をまたぐルースキー島連絡橋が完成すると、蘇通大橋の中央径間をわずか16m上回り、世界最長記録は塗り替えられた。現在、蘇通大橋は工事中の2橋を含めて世界6位となっており、斜張橋の世界一は、昨年完成した中国の常泰長江大橋(Changtai Yangtze River Bridge)で、その中央径間は1,208mである。
吊橋においても2009年竣工の西堠門大橋(Xihoumen Bridge)が1,650mと、デンマークのグレートベルト・イースト橋(Great Belt West Bridge)の1,624m(1998年)を抜いて、日本の明石海峡大橋の1,991m(1998年)に次ぐ世界第2位となっていた。なお、2026年現在、明石海峡大橋は、2022年にトルコの1915チャナッカレ橋2,023mに世界一の座を譲っている。中国では現在でも長大吊橋の建設は続いており、2年後の2028年に現在建設中の張靖皋長江大橋(Zhangjiagang–Jingjiang–Rugao Yangtze River Bridge)が完成すると、中央径間が2,300mで世界一を塗り替えることになる。
蘇通大橋の建設は、江蘇省蘇通大橋建設指揮部 (Jiangsu Provincial Sutong Bridge Construction Commanding Department)によって進められ、上部工の施工は中港第二航務工程局(The Second Navigational Engineering Bureau of China Communications Construction Company)が担当した。また、コンサルタントはCOWI A/Sが主体として担当したが、建設技術顧問に東京大学名誉教授の伊藤學先生が招聘され、上部工のエンジニアリング業務を日鉄トピーブリッジ(株)がJiangsu Fasten Nippon Steel Cable Co., Ltdとして実施するなど、日本の専門家や企業が深く参画していた。
主桁は鋼製の箱形断面であり、主塔は高さが300mを超える鉄筋コンクリート造である。また斜張橋に接続する橋は、いずれもPCの箱形断面の連続桁形式である。建設は2003年6月に始まり、約5年の工事期間を経て2008年5月に開通した。予定より約1年の短縮であったという。
世界で初めて中央径間1,000m超を記録した蘇通大橋は、単に規模の大きさだけでなく、中国における長大橋建設の勢いを示す象徴的な橋でもあった。後編では、筆者が現地で目にした橋の実際のスケールと、充実した展示施設を紹介する。
(理事長 辻 幸和)
【参考文献】
1)Qingzhong You, Xuewu Dong, Xigang Zhang, and Shouchang Wu: Sutong Bridge – The Longest Cable-Stayed Bridge in the World, Structural Engineering International, 4/2008, pp.390-395
※本稿は、コンクリートテクノ 2016年1月号/Vol.35. No.1(pp.21~23)に掲載されたコラム
「揚子江を渡る世界トップクラスの蘇通大橋」を元に追加・修正したものです。
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